引っ越しの際などで新居を探していると、必ず目にするLDK表記。なぜリビングダイニングとまとめて呼ばれているのか。そもそもLDKとは何か。今回のコラムでは基本中の基本から意外な事実まで、LDKにまつわる今昔物語を紹介します。
LDKの基礎知識「そもそも、なに?」
よく目にするとはいえ、その内容を正確に知っているでしょうか。LDKを分解してみましょう。
「L」は「リビング」、「リビングルーム」の略称です。「居間」や「茶の間」を指します。居間ではなく、リビングと記載されている場合は、洋間であることが多いです。
「D」は「ダイニング」、「ダイニングルーム」の略称です。「食堂」や「食事室」を指します。本来は、キッチンやリビングからも独立した部屋のことですが、日本ではその形態はとても珍しく、ダイニングキッチン(DK)やリビングダイニング(LD)が多くを占めています。
「K」は「キッチン」、「台所」です。
LDKという概念の定着「いつからLDKって言われ始めた?」
もともと日本では、食事や就寝を同じ部屋で行うのが一般的でした。しかし、建築家・建築学者の西山夘三(にしやまうぞう)が1942年に発表した論考「住居空間の用途構成に於ける食寝分離論」において、食室と寝室を分けて設けることは「秩序ある生活にとって最低限の要求である」とし、「食寝分離」の必要性を説きました。
布団の埃が舞う中での食事を避けるといった衛生面の改善、家族内の生活時間帯のずれ(深夜帰宅・早朝出勤など)に対応した食事、就寝時間の確保、食卓が固定されることによる家事労働の軽減など、さまざまなメリットが挙げられたのです。狭い住宅だからこそ、何をする場にもなりえると西山は考えました。
その後、食事をする部屋、就寝する部屋を分ける「食寝分離」の概念は、大量の住宅供給が求められた第二次大戦後に住宅平面計画の基本理念の一つとなったことで、広く定着することになります。つまり、戦後に「食寝分離」が定着するまでは、「L(リビング)」「D(ダイニング)」という概念は一般的ではありませんでした。
日本人に合ったスタイル「LDKにとらわれない間取り」
戦後、広く定着することとなった「LDK」の概念ですが、食事を行う「ダイニング」が一般的かと言われると疑問が残ります。テーブルを使って食事をする場所のことを「ダイニング」と呼びますが、ダイニングテーブルは、作業用+朝食など簡単な食事用とされ、夕食は居間(=リビング)で床に座って食べるスタイルが多かったのです。今でもダイニングテーブルを使用せず、床に座って食事をする家庭は珍しくありません。
「食寝分離」で、寝室を分けるのには慣れたものの、リビングとダイニングは分けずに一つの部屋で完結させる。慌ただしい朝や家族のいない昼間は一緒に食事ができないが、夕食は家族とくつろぐ空間で食事をとる。そんなライフスタイルに合っているのが、食事(D)とくつろぎ(L)が一つになったLDKの間取りなのかもしれません。最近では、LDKのほかに、家族とくつろぐ場所として「ファミリールーム」がある物件も見られるようになってきています。
これまでLDKについて語ってきましたが、私は実家の3LDKのマンションから引っ越すため、新居を探し中です。暮らしやすい間取り、自身のライフスタイルに合った間取り、予算に合った間取りを探すことはもちろん大切ですが、その歴史にも目を向けてみると、新しい発見があるかもしれません。
参考文献
建築知識用語辞典シリーズ インテリアコーディネーター用語辞典
著 町田ひろ子 インテリアコーディネーターアカデミー
インテリアコーディネーター 試験対策テキスト&問題集 1次
著 内本雅 監修 宮後浩 秀和システム
インテリアコーディネーターハンドブック 総合版 上
公益財団法人 インテリア産業協会
SUUMO
https://suumo.jp/article/oyakudachi/oyaku/chumon/c_plan/living_dining_difference/